家長の涙の訳(フロンターレvsFC東京)

2022シーズン最終節の多摩川クラシコ。1人少ない60分間を耐え、3-2で勝利!しかも10人の状態から2得点して勝ち切りました。

 

冷静に考えたら、無駄に劇的な展開だったと思います。警戒していた外国人FWにジェジエウ選手の裏を取られ、スペースに出てきたところをソンリョン選手が接触してストップ、DOGSO。先制点も獲り、それまで良い状態で試合も進められていただけに、独り相撲で劇的にしただけかもしれません。ただ、勝つしかない。その状況で監督・選手達が見せた気迫は、今シーズン見たことがないくらいの鬼気迫るものだったのは事実だと思います。

 

もちろん今シーズン、選手達に気迫が足りなかったと言うつもりはありません。ただ、本当に「この試合を絶対に勝つ」という気迫が一年間あったのか?ちょっと疑問に思ったのは、公式サイトに掲載された家長選手のコメントを読んだからです。

 

>この試合だけを見たら、みんな勝点3をとるために頑張ったと思う。ただ、それは今日の試合だけの話かなと。

 

試合終了後の家長選手の涙のわけはわかりません。ただ、家長選手は憲剛選手からフロンターレを託された身。フロンターレにタイトルをもたらすことができなかった悔しさが一番でしょうが、もしかしたらこのコメントにあることも涙のわけなのかもしれません。

 

今シーズン、どうしてこんなに「取りこぼし」が多かったのか?もちろん主力選手の移籍とそれに見合わない補強が直接の原因だと思います。これは今シーズン中、私は一貫して言ってきました。編成の大失敗を現場がなんとかしている、と。ただ、それでもなんとかできたのではないか?ということを家長選手が感じていたとしたら、これはチームとしての大問題です。

 

思えば2020と2021シーズンは、勝っても喜ばないのがフロンターレでした。勝つのが当たり前だからではなく、どうやって勝つのか、もっとできたのではないか。常に矢印を自分たちに向けてやってきました。ところが今シーズンはどうか?コロナ禍や他チームとの問題もあったとはいえ、自分たちに対してそこまでの厳しさがあったのか?そこが足りていなかったのではないか、と家長選手が感じていたのかもしれません。つまり、タイトルという結果だけではなく、フロンターレの中にあった自分達への厳しさを継承させられなかったことを悔やんでいるのではないか?

 

シーズンが終わった今、アジアツアーがあるとはいえ一旦リセットです。選手も入れ替わりがあるでしょう。その中でフロンターレアイデンティティ、つまり地域密着+攻撃的そして常に自分たちに厳しく。これらを紡いでいくことができれば、来シーズン巻き返しもできる。ただ、これができなかった時、ここ数年の様相とは違う結果が突きつけられると思います。自分達への厳しさを、もう一度突き詰める風土を醸成してほしいと思います。

 

日程もコロナ禍も編成も散々だった2022シーズン。現場には休養を、フロントには反省と分析と課題解決策を真剣に練ってほしいと思います。そのためにはもう一度、妥当なKGIを設定してほしい。やみくもに「4冠!」とか叫んでサポーターを盛り上げるのではなく、彼我の力を分析し、日程も考慮したうえで、どこを目指すのか。そしてKPIを設定し、そこに向けて進捗をチェックする。一般企業ではオーソドックスなことがフロンターレのフロントではできていないのではないか?そう思える一年でした。アジアツアーが終わった後、会議室でお茶でも飲みながら談笑し、一杯飲みに行く、なんてことになってないよね?

 

最後までスッキリしないシーズンでしたが、それでも現場の頑張りでここまで来れました。最終節まで消化試合がなかったというのは、サポーターにとって本当にありがたいこと。来シーズンも期待できるフロンターレになりますように。